登記DXとスマート変更登記制度が生まれた背景
所有者不明土地の増加は全国で再開発や防災計画を阻み、行政コストを押し上げる深刻な課題になっています。
法務省はこの問題を解消するため、不動産登記法を段階的に改正し、二〇二四年四月に相続登記義務化を先行させました。
続く二〇二六年四月一日には、住民基本台帳ネットワークと法務局システムをオンライン連携させ、登記名義人の住所や氏名を自動で更新する「登記官による職権更正(通称スマート変更登記)」がスタートします。
行政情報をリアルタイムに活用する登記DXは所有者不明土地対策の要であり、相続人にとっては住所変更登記義務化に備える強力なサポートになります。
スマート変更登記とは何か
制度の定義と自動反映される変更内容
スマート変更登記制度では、市区町村が住基ネット経由で把握した転居や改姓情報を法務局に提供し、登記官が職権で変更登記を行います。
対象は登記名義人の住所変更と氏名変更で、行政側が情報を照合して登記簿を更新するため、従来必要だった住民票や戸籍附票などの添付申請が不要になります。
住民票と登記データのオンライン連携の仕組み
法務省とデジタル庁が共同構築する統合プラットフォームを介し、自治体が毎月送信する変更情報を登記データベースが自動受信します。
所有者が引っ越していたりしていることが判明した場合、自動で登記してくれる仕組みです。
自動更新の対象外となるケース
海外転居で住基ネットを離脱した人、住民票に旧住所の連続性が残っていない人、登記簿側の氏名フリガナが欠落している物件などは自動連携の対象外です。
対象外の場合は従来どおりの自主申請が必要になるため、早めに現状を確認することが大切です。
相続登記とスマート変更登記を同時に考えるべき理由
相続人の住所・氏名変更リスクを自動でカバーするメリット
相続登記を済ませた後に相続人が転居や改姓をしても、自動連携が機能すれば登記簿は最新情報に保たれます。
これにより、将来の売却や担保設定時に追加で変更登記を申請する手間と費用を抑えられます。
義務違反による過料を防ぐ仕組み
住所変更登記義務化は二〇二六年四月に始まり、変更後二年以内に登記申請を怠ると五万円以下の過料に処せられる可能性があります。
スマート変更登記を利用すれば自動で義務を履行できるため、過料リスクを事前に遮断できます。
他のブログ記事で住所変更登記義務化を解説していますので、ご覧ください。
相続登記の申請時に情報を整える効率化
相続登記の段階で住民票や戸籍附票の連続性を整理し、登記簿の氏名カナを補完しておけば、自動連携の成功率が高まります。
行政書士と司法書士が協同で戸籍の欠落を補完し、オンライン連携登記に適したデータ整備を行うと、後々の住所変更もスムーズに自動反映されます。
行政書士が説明する実務ポイント
適用条件と事前チェックの方法
スマート変更登記を利用するには、名義人が住基ネットに正確な現住所で登録されていること、登記簿の氏名と自治体情報が一致していることが前提です。
まずは登記事項証明書を取り寄せ、氏名の漢字や住所に誤りがないか確認します。
古い表記や旧字体が使われている場合は、通常の変更登記で修正し自動連携の基盤を整えます。
申請前に発生しやすいトラブルと対策
戸籍附票に抜けがあり住所履歴が切れている、外国文字の表記ゆれで一致判定が失敗する、マイナンバー未登録で住基ネットの情報が欠落している、こういった要因は自動更新できなくなることがあります。
行政書士は戸籍謄本と附票を洗い直し、必要に応じて改製原附票を取得して連続性を確保します。
相続人同士で住所が異なる場合の整理方法
複数の相続人がそれぞれ転居を繰り返している場合、登記簿と自治体情報のマッチング難度が上がります。
申請時に最新住民票を全員分そろえ、登記簿へカナ氏名を補充することで、将来のスマート変更登記の成功率を高められます。
まとめ──自動連携時代に備えて今できること
スマート変更登記はDX時代の登記制度を支える重要インフラです。
相続登記を行う際に登記データと住基ネット情報を整えておけば、住所変更義務化後の負担と過料リスクを大幅に軽減できます。
名義人の情報が正確に整っていれば、所有者不明土地対策にも貢献でき、地域全体の土地活用が進みます。
行政書士に相談するメリット(姫路市エリア)
当行政書士事務所では戸籍調査、マイナンバー付番状況の確認、登記簿のカナ氏名補完、オンライン申請の代理までワンストップで支援します。
下の問い合わせページからご相談いただき、相続登記と住所変更登記を同時に済ませ、二〇二六年のスマート変更登記制度が本格稼働する前に準備を整えましょう。
本記事は改正不動産登記法(令和六年四月施行、令和八年四月施行部分含む)と法務省公開資料を参照して執筆しています。制度詳細は今後変更される可能性がありますので、最新情報は法務省やデジタル庁の公式サイトをご確認ください。
コメント