資産管理法人を設立した後に最も悩ましいのが「株式を子へどう承継するか」という課題です。
株式には会社のコントロール権が含まれるため、遺産分割だけでなく将来の家族関係にも大きく影響します。
本稿では自身が資産管理法人を経営する行政書士の視点から、承継方法の選択肢、成功例と失敗例、そしてトラブルを避けるための具体策を整理します。
株式承継が重要になる理由
資産管理法人を使うと、不動産や金融資産の運用益を法人で受け取りやすくなります。
節税メリットがある一方で、法人に移した資産の「所有権」は株主が握ります。
将来子どもへ資産を残すには、株式の分配と議決権の設計が欠かせません。
株式を渡す三つの方法
1. 生前贈与
- 暦年贈与(110万円基礎控除)や相続時精算課税(2,500万円)を活用し、段階的に承継します。
- 長所:早期に株式を移せる。相続税対策に直結します。
- 短所:贈与税が発生する場合がある。株主が増えると意思決定が複雑になります。
関連リンク:国税庁タックスアンサー No.4402
2. 遺言による承継
- 公正証書遺言や自筆証書遺言で、株式の帰属を指定します。
- 長所:意思を明確に示せる。遺産分割協議を省ける場合があります。
- 短所:遺留分侵害額請求の対象となる可能性があります。
3. 家族信託
- 株式を信託財産にし、受益権を子へ段階的に渡します。
- 長所:経営権と経済的利益を分けて管理できます。認知症対策としても有効です。
- 短所:契約設計が複雑です。専門家の関与が必須になります。
成功事例──計画贈与でトラブルを回避
概要
- 父が法人設立直後から10年間、毎年110万円ずつ株式を長男と長女に贈与しました。
- 長男を早期に役員へ登用し、議事録で議決権移行を明確にしました。
- 相続発生時、父の保有株は30%未満に抑えられており、株価評価額も贈与時点の低い水準で固定されました。
ポイント
- 時間をかけて持株を分散したため、相続時の課税対象が減少しました。
- 経営権を長男に集中させ、意思決定を一本化しました。
失敗事例──名義分散のみで機能停止
概要
- 父が100%株主のまま、配当だけを家族へ分配し続けました。
- 相続発生後、株主は均等に分散したものの、代表を決められず総会が紛糾しました。
- 銀行からの追加融資が止まり、物件の改修が滞りました。
問題点
- 名義を変えただけで実質的な支配権が父のままでした。
- 定款や遺言で議決権ルールを整えていませんでした。
トラブルを防ぐ五つのポイント
- 株主構成は「均等」ではなく「機能」で決めます
経営を任せる子へ議決権を集中し、他の子へは受益権や他財産で調整します。 - 定款と遺言で議決権ルールを明文化します
会社法309条に沿って、普通決議と特別決議の要件を整理します。 - 家族会議で早期に合意を形成します
相続の話をタブーにせず、現状と将来像を共有します。 - 生前から株価シミュレーションを行います
類似業種比準価額方式や純資産価額方式で毎年試算し、贈与・遺言のタイミングを検討します。 - 専門家連携で文書と登記を整備します
行政書士が議事録や贈与契約書を整え、税理士が税負担を試算し、司法書士が株主名簿を更新します。
行政書士ができること
- 贈与契約書と議決権管理書類の作成
- 定款変更(譲渡制限株式や役員選任ルール)
- 公正証書遺言の原案作成
- 家族信託契約書の設計補助
- 税理士・司法書士との連携による一貫サポート
よくある質問(Q&A)
Q1 株式を子に均等配分しても大丈夫ですか
議決権が拮抗すると意思決定が滞ります。経営を担う子へ過半数以上を集中させる案を検討ください。
Q2 生前贈与と遺言、どちらが有利ですか
贈与は節税効果が高い一方で贈与税が発生します。
遺言は法的効力が強いですが遺留分対策が必要です。併用が現実的です。
Q3 株式の評価方法はどう決まりますか
非上場株式は類似業種比準価額方式または純資産価額方式が基本です。
資産内容や収益状況で選択が分かれます。
まとめと次のステップ
株式承継は「分け方」より「渡し方」の設計が重要です。
生前贈与・遺言・家族信託を組み合わせ、議決権を誰に集中させるかを早めに決めることで、相続時の混乱を防げます。
姫路市の行政書士が行う無料オンライン相談では、最新の税制と評価通達を踏まえた株式承継プランを個別にご提案します。
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本記事は令和7年6月7日現在の法令・通達に基づく一般的な解説です。個別の税務判断は税理士へご確認ください。
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