「親が遺した宝石や骨董品をどう分けたら良いかわからない」
「相続税に影響するのか知りたい」
そんな悩みを抱えるご家族は少なくありません。
動産は見た目だけでは価値が読めず、相続人同士の意見が食い違いやすい財産です。
ここでは行政書士の立場から、評価方法・分割の考え方・トラブル防止策をわかりやすくまとめます。
1 動産も相続財産に含まれる
被相続人が所有していた貴金属・着物・骨董品は民法896条の「遺産」に該当し、現金や不動産と同じく遺産分割協議の対象になります。
価値が高い場合は相続税の計算にも影響するため、まず“あるかどうか”を確認しましょう。
主な対象品目
- 金・プラチナ・ダイヤモンドなどの貴金属
- 高級時計(ロレックス、オメガなど)
- 着物(訪問着・振袖・帯・打掛)
- 掛け軸・陶磁器・茶道具・浮世絵・油絵などの骨董・美術品
- コレクション(切手・コイン・フィギュアなど)
2 相続税で求められる評価方法
相続税は相続開始時点の時価で計算します(相続税法22条)。
動産の時価は不動産と違い公的な指標がないため、根拠資料の添付が欠かせません。
評価方法 | 概要 | 添付資料の例 |
---|---|---|
①鑑定士・専門業者査定 | 宝石商・古美術商・百貨店外商などへ依頼し見積書を取得 | 鑑定書・査定書・見積書 |
②継続的売買実例価額 | オークションや専門サイトの同種同型の落札相場を参考にする | 取引履歴スクリーンショット・市況レポート |
③簡易評価 | 市場価値が低い雑品を概算で評価。慣例として「取得価額の5万円未満」などを雑品に含めるが、基礎控除内でも申告不要とは限らない | 家庭用財産一覧表 |
高額動産は専門鑑定が安全
宝石・高級時計・希少な骨董品などは数十万〜数百万円の評価になることがあります。
国税庁の質疑応答事例でも、高額品ほど鑑定書添付が望ましいと示されています。
鑑定費用は必要経費として相続財産から控除できます。
3 分割方法と起こりやすいトラブル
分割方法
- 現物分割
指輪を長女、着物を次女…など現物のまま分ける。価値差が大きい場合は代償金で調整。 - 換価分割
一括で売却し、売却代金を法定相続分で按分。公平だが、形見として残せない。 - 共有分割
相続人で共有名義にし、将来売却時に清算。ただし管理の手間と保存コストがかかる。
よくあるトラブル
- 「口約束」で相続人が持ち出し、後日高額査定になり揉める
- 誰も価値を知らず捨てた後に高値が判明し、他の相続人が損害賠償を請求
- 宝石を一部だけ売却し、売却益の分配でもめる
動産は見える化・合意形成・エビデンスの3点が重要です。
4 行政書士が支援できること
4-1 相続財産目録の作成
遺品整理を行い、写真付きリストを作成。相続人全員が同じ情報を共有できます。
4-2 遺産分割協議書の作成
動産の分配方法(現物か換価か)を明文化し、署名押印を得て後日の紛争を防ぎます。
4-3 専門家ネットワーク連携
鑑定士・リユース業者・税理士と連携し、評価→分割→申告をワンストップで支援します。
5 相続動産の整理フロー
- 相続開始
- 動産の所在と数量を洗い出す
- 状態・価値を把握(鑑定・査定)
- 財産目録へ記載し相続人へ共有
- 分割方法を協議(現物・換価・共有)
- 遺産分割協議書へ反映し署名押印
- 必要に応じて相続税申告・納付
6 よくある質問
Q. 古い着物はほぼ価値がないと言われました。処分しても良いですか?
A. 鑑定で「無価値」と評価され、相続人全員が同意すれば処分可能です。
証拠として査定書と廃棄記録を残すと安心です。
Q. 相続人の一人が宝石を無断で持ち出しました。
A. 民法909条により相続財産は共有状態です。単独処分は不法行為になり得ます。
速やかに他の相続人と協議し、返還または価額賠償を求めてください。
Q. 生前整理したい場合は?
A. 遺言書を使って特定の相続人へ遺贈する、リユース業者へ売却して現金化するなど方法があります。贈与税・譲渡所得課税の確認を含めご相談ください。
まとめ ― 動産相続の鍵は「価値の可視化」と「全員合意」
貴金属・着物・骨董品は
- 価値が見えにくい
- 評価額が相続税に直結
- 等分が難しい
という特徴があります。
早めに鑑定書や査定書で価値を明確にし、相続人全員で分割方法を合意することが、円満相続への近道です。判断に迷ったら行政書士へご相談ください。
鑑定士・税理士と連携し、スムーズな相続をサポートします。
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