贈与 vs 資産管理法人|不動産はどちらで引き継ぐべきか?税金・分割・コストを徹底比較

不動産の生前承継は贈与と資産管理法人のどちらが有利? 相続対策

はじめに:不動産をどう引き継ぐかという大きな選択

不動産は現金と違って「分けにくい」「動かしにくい」資産です。そのため、相続や生前贈与の場面では、どのように、どの名義で保有・承継するかという戦略が非常に重要になります。

近年、贈与に加えて注目されているのが「資産管理法人」の活用です。いずれも一長一短があり、目的に応じた選択が求められます。

本記事では、兵庫県姫路市の行政書士として、不動産の承継における「贈与」と「資産管理法人」の違いを、税金・分割・維持コスト・リスク対応の観点から徹底比較していきます。また、「相続時精算課税制度」という重要な制度も交えて、より実用的な判断基準を提供します。


1. 資産管理法人とは?|法人化で株式承継が可能に

概要

資産管理法人は、個人が所有する不動産を法人名義に移し、法人がその資産を管理・運用するスキームです。

法人として設立された会社(株式会社・合同会社など)を通じて、家族が役員や株主となることで資産の一元管理と承継の準備が整います

メリット

  • 株式での相続が可能=不動産を現物で分割する必要がない
  • 株式の評価方法により、相続税評価額を圧縮できる余地がある
  • 役員報酬を活用した所得分散・節税対策が可能
  • 法人単位で外部委託・管理体制が確立しやすい

デメリット

  • 設立時のコスト(登録免許税、定款認証、設立登記など)
  • 継続的な維持費(会計、税務申告、社会保険など)
  • 不動産の法人移転時に譲渡所得課税が発生する場合あり
  • 法人運営に慣れていないと実務負担が重い

2. 贈与とは?|早期の承継でトラブル防止

概要

贈与は、生前に財産を無償で他者に移転する制度です。不動産を相続前に贈与しておくことで、後の分割トラブルや相続争いを防ぐ目的があります。

メリット

  • 受贈者が早期に不動産を運用・管理できる
  • 遺産分割の煩雑さを回避できる
  • 暦年贈与(年間110万円以下の非課税枠)を活用すれば小口資産移転が可能

デメリット

  • 評価額は時価が基本=課税対象額が大きくなる
  • 贈与税率は最大55%と高率
  • 不動産取得税・登録免許税も課税される
  • 生前贈与加算(相続前7年以内の贈与が相続財産に加算)への注意が必要

3. 相続時精算課税制度の活用

贈与を行う際に、特に親子間(60歳以上の親→18歳以上の子、もしくは孫)で使えるのが「相続時精算課税制度」です。

この制度では、贈与財産のうち2,500万円までが非課税、超過分には20%の一律税率が適用され、相続時に精算して課税評価を確定します。

この制度の利点

  • 高額な不動産も、贈与時点での課税負担を抑えられる
  • 早期の資産移転が可能
  • 将来の相続税対策と一体で設計できる
  • 孫に”一代飛ばし”で収益を生む不動産を贈与することによって非常に高い節税効果が得られる(ただし孫が代襲相続人でない場合、相続税額に20%が加算されるので十分なシミュレーションが必要)

注意点

  • 一度選択すると暦年贈与非課税枠が使えなくなる(終生)
  • 相続時に結局課税される(逃げ得ではない)
  • 計画的に活用しなければ効果が薄い

4. 比較一覧|税制・分割・コスト・実務

比較項目贈与資産管理法人
初期税負担高い(贈与税最大55%)移転時に譲渡所得税・法人設立費用
相続時評価不動産の評価額株式の評価(純資産価額など)に基づく
分割のしやすさ不動産を共有または個別贈与株式での調整が可能
実務管理受贈者が直接管理法人役員が運営(責任共有)
節税効果限定的(特例あり)法人税・役員報酬・費用化により高い可能性
維持費なし〜少額年間数万円〜数十万円(税理士報酬含む)

5. ケース別おすすめ戦略

贈与が向いているケース

  • 小規模資産の早期承継を希望する場合
  • 相続前に実効支配権を与えたいとき

資産管理法人が向いているケース

  • 複数の収益物件を一括で管理したい
  • 分割しにくい資産を、将来の株式で調整したい
  • 所得分散や節税も視野に入れたい

相続時精算課税を使った組み合わせが有効なケース

  • 不動産の評価額が2,500万円前後で、早期移転をしたい
  • 法人設立前に個人名義→子へ移しておきたい
  • 将来の相続税を見据え、課税時期を先送りしたい

まとめ:制度を単独でなく“連携”で考える

贈与と資産管理法人は、どちらも有効な不動産承継の選択肢ですが、目的・時期・規模に応じて組み合わせて使うのがもっとも効果的です。

特に「相続時精算課税制度」は、贈与を促進するための重要な制度であり、節税や承継のスムーズ化に資する場面が多くあります。

一人で判断するのではなく、専門家のアドバイスを受けながら、3つの制度をどう活用するかという“戦略的設計”が必要です。


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