個人資産を法人に贈与する際の「利益相反承認決議」とは?行政書士が実務とリスクを解説

個人資産を法人に 贈与する際の 「利益相反承認決議」とは? 資産管理法人

個人が所有する不動産や車両を、家族経営の資産管理法人へ贈与したいという相談が増えています。
手続きを簡単に済ませたい気持ちは理解できますが、会社法356条・365条が定める「利益相反取引の承認」を怠ると、取引が無効になったり役員責任を問われたりするリスクがあります。
ここでは行政書士の立場から、承認決議のポイントと安全な実務フローを整理します。


資産を法人へ贈与する主な目的

  • 法人名義にまとめて管理を一元化する
  • 相続税対策として資産を株式で保有する
  • 法人課税へ切り替え、所得分散を行う
  • 法人の信用力を高め、事業融資を受けやすくする

これらの目的を実現するためには、法的形式を整えることが前提になります。


なぜ利益相反取引に該当するのか

会社法は、役員が会社と直接または間接に取引する場合、取締役会(または株主総会)の承認を義務付けています(会社法356条1項1号)。
個人から法人への贈与は無償でも「自己取引」に当たり、法人に有利・個人に不利という利益相反構造が生じます。
事前承認を取らずに進めると、取引の無効が主張されたり、役員が善管注意義務違反(会社法423条)として責任追及を受けたりするおそれがあります。


承認決議が必要なケース

取引類型承認手続き根拠
個人が保有不動産を無償で法人へ贈与取締役会または株主総会の事前承認会社法356条1項1号
代表取締役が自己所有の車両を時価より安く売却同上同上
取締役の配偶者が法人へ資産を贈与「間接取引」として同上会社法356条1項3号

承認決議の実務フロー

  1. 取引内容を整理する
    • 贈与対象資産と評価額(不動産鑑定や複数査定で裏付け)
    • 贈与の目的と法人側のメリット
  2. 議案書を作成する
    • 議題:「利益相反取引承認の件」
    • 利害関係役員の氏名・資産内容・評価額を明記
  3. 取締役会または株主総会で承認する
    • 利害関係役員は議決に加わらない(会社法365条2項)
    • 過半数の賛成で承認
  4. 議事録を作成し10年間保存する
    • 取締役会議事録保管期間は10年(会社法371条3項)

税務・登記の留意点

  • 法人税の受贈益課税
    法人が資産を無償取得すると、時価相当額が益金として課税されます(法人税法22条2項)。
  • 登録免許税・不動産取得税
    不動産を贈与する場合、所有権移転登記と税金が発生します。
  • 贈与税ではなく法人税課税
    個人→法人の贈与は、贈与税ではなく法人側の課税となる点に注意します。

行政書士が支援できること

  • 利益相反承認用の議案書・議事録の作成
  • 贈与契約書のリーガルチェック
  • 不動産鑑定士・税理士・司法書士との連携によるワンストップ体制
  • 将来の税務調査を見据えた証拠資料の整備
  • 役員責任を回避するための社内手続きマニュアル作成

よくある質問(Q&A)

Q1 少額資産でも承認決議は必要ですか
価額の大小にかかわらず、自己取引に該当すれば承認が必要です。
簡易議事録でも構いませんが、必ず残してください。

Q2 贈与契約書だけでは足りませんか
贈与契約書は取引の存在を示す書面であり、会社法上の手続き(承認決議)とは別です。
両方備える必要があります。

Q3 承認を取り忘れた場合の対処法はありますか
速やかに株主総会または取締役会を開き、事後承認を試みる方法があります。
ただし、納税や責任追及のリスクは残るため、専門家に相談してください。


まとめと次のステップ

個人資産を資産管理法人へ移す際は、利益相反承認決議を事前に取得することが安全運営の第一歩です。
契約書・議事録・評価資料を整え、法人税や登記の手続きを並行して行えば、将来的な税務調査や第三者からの指摘にも対応できます。

手続きに不安がある方は、初回無料オンライン相談をご予約ください。
姫路市の行政書士が具体的な資料作成と専門家連携をサポートし、安心して資産を法人へ移転できる環境を整えます。


本記事は令和7年6月3日現在の法令・通達に基づく一般的解説です。個別の税務判断は税理士へご確認ください。

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