個人で所有している不動産を、自ら設立した資産管理法人へ売却したいと考える相談が増えています。
節税や相続対策に役立つ一方で、取引価格を「時価」とするルールを守らなければ、贈与税や追徴課税のリスクが高まります。
本記事では行政書士の立場から、時価評価の考え方と手続きの流れを分かりやすく説明し、安心して資産移転を進める方法をお伝えします。
資産管理法人とは
資産管理法人は、不動産や株式などを法人名義で保有・運用するために設立される会社です。
法人税率の活用による所得分散、経費計上の柔軟性、相続時の遺産分割円滑化といった利点があります。
個人から法人へ不動産を移すときは、贈与ではなく売却を選ぶと資金の動きと税務処理が整理しやすくなります。
個人から法人への売却は「時価」が原則
個人と法人は法的に別人格です。
したがって売買は第三者間と同様に公正な価格で行う必要があります。
市場価格の半額以下など極端に低い価格で売ると、国税庁が定める「低額譲渡」に該当し、みなし贈与として贈与税の課税対象になります。
詳しくは国税庁「低額譲渡と贈与税の取扱い(タックスアンサー No.4423)」を確認してください。
国税庁|低額譲渡と贈与税の取扱い
時価の評価方法
不動産鑑定士による評価
最も信頼性が高く、税務調査でも根拠として採用されやすい方法です。
正式鑑定は費用がかかりますが、高額物件や争いを避けたい場合に有効です。
不動産業者の査定額
複数社の査定書を比較し、成約事例や路線価を踏まえて価格を決定します。
客観性を確保するため、査定書は保存してください。
固定資産税評価額の補正
固定資産税評価額に1.2〜1.5倍の補正を掛けて概算時価を求めることがあります。
ただし地域差が大きいため、裏付けとして国土交通省の「不動産価格指数」や国税庁「路線価図」を併用すると安心です。
国交省|不動産価格指数
国税庁|路線価図
売却に伴う税金
個人側の譲渡所得税
売却益が出た場合、所有期間5年超は20.315%、5年以下は39.63%の税率で課税されます。
計算方法は譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。
詳細は国税庁「譲渡所得の計算(タックスアンサー No.3208)」をご覧ください。
国税庁|譲渡所得の計算
法人側の会計処理
取得した不動産は固定資産として計上し、建物部分を減価償却します。
借入金の利息も経費化できます。
消費税の取扱い
住宅用建物の譲渡は非課税ですが、事業用建物は課税資産になり消費税の計算が必要です。
国税庁「消費税の課税対象(タックスアンサー No.3240)」を確認してください。
国税庁|消費税の課税対象
登記と地方税
名義変更では登録免許税(固定資産税評価額の2%)と不動産取得税(住宅・土地3%、非住宅4%)が法人に課税されます。
登録免許税は法務省の案内、不動産取得税は都道府県税サイトで最新の軽減措置を確認してください。
法務省|登録免許税
実務上の注意点
- 資金の実体を伴う
売買契約書を作成し、代金を法人口座へ送金して取引の事実を証明します。 - 価格妥当性を資料で説明
鑑定評価書や複数の査定書を保存しておくと税務調査でも安心です。 - 税務申告を期限内に行う
個人側の譲渡所得申告、法人側の消費税・法人税申告を怠らないでください。
行政書士が提供できる支援
- 資産管理法人の設立手続きと定款作成
- 不動産売買契約書や覚書の作成
- 登記申請書類の補助と司法書士・税理士との連携
- 登録免許税・不動産取得税の試算サポート
専門家が関与することで、手続き漏れや税務否認のリスクを軽減できます。
よくある質問
Q1 時価より安く売却するとどうなるか
時価の半額以下など著しく低い価格で売却すると、みなし贈与課税の対象になります。
Q2 法人が借入で購入しても問題ないか
問題ありません。借入金利息を経費化できるため、資金効率が向上します。
Q3 法人設立と売却の順序
通常は法人設立後に売却します。現物出資も可能ですが、手続きが煩雑です。
まとめ
資産管理法人への不動産売却は、時価評価を正しく行い、適切な書類と税務申告をそろえれば、有効な節税と相続対策になります。
とはいえ、税金の取り扱いや、借地権の問題も発生するので事前の計画をしっかり立てておかないと、むしろ大きな税金を払うことになる場合があります。
ご不安がある場合は、まず無料相談をご利用ください。
最新の税制とご家族の状況を踏まえて、最適な移転スキームをご提案します。
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