資産管理法人は、不動産や株式など高額資産の相続税対策として広く利用されています。
しかし、設立から間もなく相続が発生した場合には3年以内贈与加算(相続税法19条の2)により、節税どころか相続税が増えるリスクがあります。
2024年以降は段階的に最長7年まで対象期間が延びるため、注意が必要です。
この記事では行政書士の視点から、制度の仕組みとリスク回避の方法をわかりやすく解説します。
要点サマリー
- 相続開始前3年(2024年以降は最長7年)以内に移転した資産や株式は相続税に加算される
- 被相続人が法人を実質支配していると、法人資産が「みなし相続財産」と判断されやすい
- 時間をかけて法人の独立性を築き、運営実体を整えることがリスク回避の鍵
資産管理法人とは
資産管理法人は、個人が保有していた不動産や有価証券、現預金などを法人名義に移し、運用・管理を行う会社です。主な目的は次の四つです。
- 不動産所得や配当を法人課税に切り替え、個人の所得税を軽減する
- 役員報酬を活用して家族へ所得分散を行う
- 法人株式に資産を集約し、遺産分割をスムーズにする
- 法人株式の評価引き下げを利用して相続税を節約する
なぜ「設立3年以内の相続」が問題になるのか
被相続人が亡くなる前3年以内に行った贈与や資産移転は、相続税の課税対象に加算されます(相続税法19条の2)。
2024年以降の贈与については段階的に対象期間が延長され、最長7年までさかのぼる仕組みです。
改正スケジュール早見表
- 2024年贈与分:加算期間4年
- 2025年贈与分:加算期間5年
- 2026年贈与分:加算期間6年
- 2027年以降の贈与分:加算期間7年
ケーススタディ:設立3年以内に相続が発生
- 被相続人が資産管理法人を設立
- 自身の収益不動産(時価1億円)を法人へ現物出資
- 同年に法人株式の90%を子へ贈与
- 3年以内に相続が発生
税務署の着眼点
- 不動産の経済的価値が株式へ移転しただけで、実質的な支配は変わらない
- 被相続人が代表取締役として法人を運営していた
- 株式贈与後も重要事項を被相続人が決定していた
結果として、不動産全体(または株価の上昇分)が相続財産に加算され、高額な相続税が課される可能性があります。
リスク判定チェックリスト
□ 設立から3年(2024年以降は最長7年)以内に多額の資産移転を行った
□ 被相続人が法人の代表取締役または実質的支配者である
□ 株式の過半数を被相続人と配偶者が保有している
□ 法人の収益管理や意思決定を被相続人が続けている
□ 議事録や取引が形式的で、法人の独立性が薄い
チェックが一つでも当てはまる場合、相続税加算リスクが高まります。
安全な資産移転の3ステップ
ステップ1 時間をかけて法人運営の実体を築く
- 役員を子や配偶者に変更し、被相続人の職務を縮小する
- 議事録・決算書を整備し、法人経営を客観的に記録する
ステップ2 資産移転を計画的に分散する
- 一度に多額を移すより、数年に分けて移転し贈与税と相続税のバランスを取る
- 株式贈与は早期に行い、持株比率を分散する
- 不動産収益により株式評価額は高くなるので、相続時精算課税制度を活用して早期に株式を移転しておく
ステップ3 専門家と相続シミュレーションを行う
- 行政書士が定款や議事録を整備し、法人の独立性を担保する
- 税理士が贈与税・相続税の試算を行い、最適な移転計画を提示する
- 司法書士が登記や株主名簿の管理を担当し、信頼性を高める
行政書士が提供するサポート
- 資産管理法人の設立書類と議事録の作成
- 株式管理台帳の整備と贈与契約書のリーガルチェック
- 税理士・司法書士との連携によるワンストップ支援
- 3年(7年)以内加算リスクを踏まえた相続シミュレーション
よくある質問(Q&A)
Q1 加算期間を過ぎれば必ず安全ですか
加算期間を超えても、被相続人が法人を実質支配していれば否認されるケースがあります。運営実体の独立性が重要です。
Q2 株式を早期に贈与すれば対策になりますか
有効な方法ですが、株式を贈与しても被相続人が議決権を持ち続けると「名義貸し」と判断されることがあります。
Q3 贈与税と相続税のどちらが有利ですか
ケースによって異なります。法人株式の評価減を活用した生前贈与が有利な場合もありますが、累進課税の影響を考慮して税理士と検討してください。
まとめと次のステップ
資産管理法人を活用した相続対策は、時間と実態の両方がそろって初めて効果を発揮します。
設立から3年(2024年以降は最長7年)以内の資産移転は相続税加算の対象になりやすいため、計画的に移転スケジュールを組み、法人の独立性を高めることが不可欠です。
節税効果を最大化しながらリスクを抑えるには、早期からの専門家サポートが欠かせません。姫路市の行政書士が行う無料オンライン相談では、最新の税制改正を踏まえたシミュレーションを実施し、ご家族の資産を守る最適なプランをご提案します。
本記事は令和7年6月4日現在の法令・通達に基づく一般的解説です。個別の税務判断は税理士へご確認ください。
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