同族会社の株式はどう評価される?相続税における「みなし規定」の落とし穴を行政書士が解説

同族会社の株式は どう評価される? 「みなし規定」を解説 相続対策

家族で経営する会社の株式を相続するとき、「想定よりも高額な評価を指摘された」という事例が増えています。
その背景にあるのが同族会社株式のみなし規定です。
税務署は株主名義よりも支配関係の実態を重視し、評価方式を切り替えて課税します。
行政書士の立場から、制度の仕組みと安全な対策をわかりやすく解説します。


要点サマリー

  • 発行済株式の50%超を家族等が保有すると同族会社に該当し、原則的評価方式が適用される
  • 税務署は「議決権行使の実態」「資金の流れ」などを見て名義を超えて支配関係を判断する
  • みなし規定で評価方式が変わると、配当還元方式の数倍に評価額が跳ね上がる可能性がある
  • 持株の分散や生前贈与は早期かつ実質的に行い、支配力を明確に切り離すことが重要

1. 同族会社とは

相続税法上、次のいずれかに該当すると同族会社と判定されます(相続税基本通達188)。

  • 被相続人と親族・同族関係者で発行済株式の50%超を保有
  • 最大議決権グループ(筆頭株主グループ)に属し、会社を実質支配

この判定に該当すると、株式評価で類似業種比準方式または純資産価額方式が適用されます。


2. 非上場株式の評価方法

方法適用対象特徴
類似業種比準方式支配株主上場会社の財務指標と比較し、利益・配当・純資産を総合評価
純資産価額方式支配株主で資産超過会社資産と負債を時価評価し、会社清算価値を算定
配当還元方式少数株主過去の配当実績を基に評価し、比較的低額になる

同族関係者とみなされると原則的評価方式(上段2つ)が適用され、評価額が大きく上がる傾向があります。


3. みなし規定が発動するケース

税務署は名義株主以外の要素も総合的に確認します。

  • 株式を家族名義に分散しているが、実質的議決権の行使者が被相続人
  • 株式取得資金が同一資金源(贈与・出資金の還流)
  • 配当方針や役員選任で被相続人の意向が優先されている
  • 親族以外の株主がいても、経営判断へ関与していない

これらに該当すると、「みなし同族関係者」として原則的評価が適用されます。

根拠リンク


4. 評価方法別の税負担シミュレーション(例)

評価方式1株当たり評価額相続税(20%想定)
配当還元方式10万円2,000万円
類似業種比準方式40万円8,000万円
純資産価額方式50万円1億円

同じ会社・同じ株数でも、評価方式が変わると相続税が数倍になることがあります。


5. リスク判定チェックリスト

□ 発行済株式の50%超を家族グループが保有している
□ 被相続人が代表取締役または実質的意思決定者
□ 株式を名義分散しただけで、支配構造が変わっていない
□ 株式取得資金の出所が同じ(実質的出資者が被相続人)
□ 株主総会議事録や配当方針の決定が形式的

一つでも該当すると、みなし同族関係者と判断されるリスクがあります。


6. リスク回避の具体策

6-1 生前の持株移転を段階的に実行

  • 暦年贈与や相続時精算課税を組み合わせて株式を早期移転
  • 贈与後は移転先株主が議決権を実際に行使する

6-2 株主構成を多様化

  • 従業員持株制度や第三者割当増資で持株を外部へ分散
  • 支配割合を50%未満に抑える計画を立てる

6-3 議事録・就業規則の整備

  • 配当方針や役員選任を株主総会で議決し、議事録を保管
  • 被相続人の退任時期と後継者登用を明確にする

7. 行政書士が提供できるサポート

  • 株主構成図と支配関係の整理
  • 議事録・議案書の作成とリーガルチェック
  • 生前贈与プランの作成と税理士への橋渡し
  • 株式評価シミュレーション資料の作成
  • 従業員持株制度導入サポート(必要に応じ司法書士と連携)

よくある質問(Q&A)

Q1 株式を相続放棄すれば課税されませんか
相続開始時点で被相続人が保有していた株式は評価対象です。
放棄後に他の相続人へ移る場合でも、課税の元になる評価額は変わりません。

Q2 株式を家族で1%ずつ持てば同族になりませんか
議決権の行使実態や出資資金の流れを見て支配関係が認定されるため、名義分散だけでは同族判定を逃れられません。

Q3 事前にどのくらい早く持株対策をすれば安全ですか
一般的には5年以上前から段階的に移転を進め、議決権行使の実態を伴わせるとリスクが下がります。
状況により異なるため早期の専門家相談が不可欠です。


まとめと次のステップ

同族会社株式の評価は名義よりも実質的支配で決まります。
みなし規定に該当すると評価額が何倍にも跳ね上がり、相続税負担が急増します。

  • 支配構造を早めに整理し、株式を計画的に移転する
  • 議決権の行使や配当方針を実態に合わせて運用する
  • 専門家と連携してシミュレーションを行い、適切な手続きを文書化する

「うちは家族経営だから大丈夫」と考えていても、実態が整理されていなければリスクは残ります。
姫路市の行政書士が行う無料オンライン相談では、最新の評価通達を踏まえた株式対策を個別にご提案します。気になる方はお気軽にお申し込みください。


本記事は令和7年6月5日現在の法令・通達に基づく一般的な解説です。個別の税務判断は税理士へご確認ください。

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